アトピー性皮膚炎の治療には、チームワークが必須です。患者ー医師との相互の信頼と協力のチームワークはもちろんですが、家族のチームワークも大切です。しかし、意外と家族のチームワークが完備していない方々が多く見られます。理由は、ステロイドに対するマスコミやインターネットの情報が多すぎて、間違った知識で混乱し、家族間の意見が一致しないからです。

 実例:アトピー性皮膚炎の乳児を連れた両親が、中国地方の他府県から受診されました。既にステロイドを数ヵ月塗布していて改善せず、両親は自己判断で中止して、リバウンドを起こしていました。この場合、両親はステロイドフリーの治療を強く希望され、両親のチームワークは良かったのですが、父型の祖父母(つまり母親にとっては舅と姑)が、ステロイドの害を理解していませんでした。

この乳児は、かなり強いステロイドを全身に塗布されていて、その為に強いリバウンドがおこり、悪化状態が長引いていました。それを両親は理解して私の治療を継続してくれていましたが、ある時、祖父母が一緒に来院し、「この悪化状態を早く改善したいので、ステロイドを使って欲しい」と、強引に要求しました。

私はステロイドの副作用やリバウンドの説明を詳細にしましたが、祖父母は聞く耳を持ってくれません。あげくの果てに外来で、祖父母が両親と口論を始めるありさまでした。後で両親に聞くと、家でもいつも口論が絶えないということでした。

しかし、アトピー性皮膚炎は精神的ストレスや不安でも悪化しますので、家族が言い争うのは、この乳児には非常に悪影響を及ぼしていました。要するに、両親と祖父母が口論する度に、アトピー性皮膚炎は悪化していたのです。そういうことも説明しましたが、祖父母は理解してくれませんでした。しかもその後、祖父母はなんと強引に地元の病院に乳児を入院させて、またステロイド治療を受けさせてしまいました。

入院中は少し改善しましたが(しかし軽度程度です)、退院してステロイドをやめると、また強いリバウンドを起こしました。その状態で私の所を受診されました。そこでリバウンドの説明を再度詳細にすると、乳児の悪化の状態とその原因(ステロイドを塗布してその後中止した事)も認識されてようやく祖父母もステロイドの害を理解してくれるようになり、その後は両親との口論も無くなりました。

結局1年半かかりましたが、その乳児はその後治癒して、現在は再発も無く、完治しています。このように、家族全員がステロイドの弊害を理解して、同じ方向を目指して一致団結する、いわばチーム医療が、アトピー性皮膚炎の治癒には必須です。

両親はお子さんの治療に加えて、祖父母との対立もあり、大変な状況であったと思います。特に母親は、舅と姑が相手ですので、辛い日々の連続だった思います。しかし、父親の愛情で母親をサポートし、それらを克服し最後は完治した例です。


 
 

 最近、嬉しい話が続きました。それぞれ今までなかなか改善しなかったアトピー性皮膚炎の方々が、当科にて完治されたのです。その喜びの声をお伝えします。
 

 実例1.九州地方からの小児の方ですが、ステロイド塗布、プロトピック塗布をして全く改善せず、その後それらを中止してリバウンドを発症して、そのまま地元での治療でよくならず、はるばる当科を受診されました。

地元では重症のアトピー性皮膚炎という診断でしたが、診察するとアトピー性皮膚炎に全身のとびひ状態(黄色ブドウ球菌と溶連菌という2種類の細菌の重複感染でした)と、カポジ水痘様発疹(単純ヘルぺスの全身感染症)を合併していました。つまり、細菌と単純ヘルペスの感染症の診断が抜けていて、その治療もされていなかったのです。

皮膚は傷がいっぱいで、痒みと痛みで夜間も不眠でした。そこで、これらに対する内服薬(抗生物質と抗ウイルス剤)を処方し、アトピー性皮膚炎には、抗アレルギー薬+かゆみ止めの内服、更にスキンケア―(イソジン消毒液+抗菌剤)をして、リント布(柔らかい皮膚を保護する布)でカバーしてもらいました。そうすると、1ヵ月後の次回受診時には著明に改善していました。

以後は月に一度受診していましたが、次第に傷も無くなり痒みも痛みも減少し、みるみるうちに改善していきました。そして内服薬も初診から4ヵ月後には減量でき、その2ヵ月後(つまり初診から6ヵ月後には)、皮膚は赤みもなくなり、痒みも無く、治癒となりました。

「これで終了です。お疲れ様でした。」と診察室で、そのお子さんとお母さんに声をかけると、お母さんは満面の笑みで、「ありがとうございました。」と喜ばれました。診察室を出て行き、診療後の手続きを受付でしている時、お母さんの「今日で治療は終わりです。お世話になりました。」と、嬉しそうな声が聞こえてきました。

診療が終わって休み時間に、受付のスタッフの方が、「先生、ありがとうございました。先ほどのお母さん、本当に喜んでいました。私もうるうるしました。」と、言ってきました。それを聞いて私もそのスタッフの方に非常に感謝しました。アトピー性皮膚炎は、患者さんの苦しみを共感することが大切で、それが信頼関係を強めます。そのスタッフの方は、前述の親子の苦しみを十分共感していて、だから治癒した時にその喜びもまた共感できたのでしょう。それで自然と感謝の言葉が出たのだと思います。

 

でも、一般的にここまでスタッフの方が患者さんの気持ちを共感できる医療施設は殆どありません。とりわけ大きな病院では、受付での対応も色々な科の患者さんが多く、個別の患者さんを覚えているのも難しい状態です。この点、規模の小さい当クリニックでは、スタッフの方々がいわば手作りの温かい医療をしています。今回もそのスタッフの方の思いやりのある人柄がこのような共感を生み出せたと思われます。

また、同様な共感は別のスタッフの方々も以前私に言ってきて、(私は良いスタッフの方々と共に診療ができている)と思って、あらためてスタッフの方々に感謝しました。医療行為は、医師と患者さんだけではなく、受付のスタッフの方々と診察の介助のスタッフの方々も含めてのチーム医療です。その意味で現在のクリニックは、私が今まで勤務してきた医療施設の中で、アトピー性皮膚炎の治療にはベストなスタッフの方々に恵まれています。


 実例2.近畿地方の他府県からの成人の方ですが、この方は、ある大学に勤務している私が敬愛するK先生からの紹介で私を受診されました。色々なステロイドを数年間塗布しても改善せず、初診時は両腕と両足に傷が多く、びらんもあり、じくじくの浸出液も多く、黄色ブドウ球菌によるとびひ状態でした。夜間の痒みも強く、不眠もありました。

とびひ状態には抗生剤内服で対処し、抗アレルギー薬+かゆみ止めの内服、スキンケア―(イソジン消毒液+抗菌剤+かゆみ止め)とリント布カバーで対処しました。ステロイドを中止するとリバウンドで両足が腫れ、それには利尿剤の内服で対処しました。その方はリバウンドの理解も良く、治療ですみやかに改善していきました。

リバウンドによる足の腫れも、約1ヵ月で改善し利尿剤も不要になり、その後も順調に改善しました。初診から3ヵ月後に受診された時は、手はほぼ治癒、足に傷が残る程度でした。夜間のかゆみも不眠も改善していました。その後、受診されずどうされたかと思っていましたが、たまたま
K先生と連絡をとる機会があり、その時K先生がその方はいまどうされているかお尋ねになりました。

思いやりの深い
K先生は、その方が悪化して受診中止を心配しておられたのです。そこでカルテを見ると、その時以後受診していないので、K先生に、「最近は受診されていません。最後の受診の時はかなり改善していたので、もしかしたら最近好調で受診しないかもしれません。または悪化して困っている可能性もあります。」と、メールを送りました。

K先生は早速その方にメールを送りましたが、その方からのメールをもらって、「嬉しいお知らせ」という件名で、大変喜んで私にその方のメールをコピーして送ってくれました。その方の了承を得て以下にご紹介致します。

「その後なのですが、飲み薬なんて全く必要のないほど普通の肌になりまして(生理前にやや荒れるくらいで)、食事もしっかりとれるようになり、体重も十分もどりました。死にそうだよと周りに言われていた日から、ここまで回復出来るとは、本当に信じがたいです。

先生が『ステロイドを使わなくても治るから大丈夫』という内容を、ぶれずにはっきり仰ってくださったお陰です。患者としては、治りそうになくても『絶対治る』とお医者様に言って頂けないと、何を芯に病気と向き合えばいいのか、すがるものがなくただ耐える日々が待つばかりとなってしまいます。

そんな中実績を重ねた先生の言葉で、もう無理だと思いながらも頑張ることが出来ました。
K先生にこの方を紹介いただけて、感謝しきれないくらいです。本当にありがとうございます。木俣先生にもお伝えしたいと思いながら、患者でいっぱいの待合室を見ると、元気な人間が時間を割いていただくわけにはいかないなと、お伝え出来ずにいました。通院はないものの、実は私もひっそりとブログ更新を心待ちにしている一人です。」

このお二人の話は本当に短期間に重症なアトピー性皮膚炎が治癒して、喜びを手にされた嬉しい実例です。




 


 

 アトピー性皮膚炎の原因は様々で、まだまだ不明な点が多いのが現状です。
私は少なくとも、アレルギー、細菌感染症、ストレスの3つの原因があると思っています。これらを同時に治療しないと改善が長引きます。
その他にも、保湿剤依存症というものがあり、外用薬をたっぷり塗布している方は、皮膚の改善が遅れる事があります。

長期の治療ではその悪化原因が不明になり、焦る気持ちになりますが、そういう時は「希望を持って」、客観的に状態を把握して改善させることが肝要です。
もちろんステロイドを長期塗布して、その後リバウンドが長引く方々は、リバウンドをよく理解して焦らずに治療することが大切です。治らないリバウンドはありません。

しかし、人によって、あるいは塗布したステロイドによって、リバウンドの強さが異なり、その結果として改善の期間も異なります。そういう時も「希望も持つ」ことが前向きに進む道です。

 実例1.生後すぐからステロイドを塗布している7歳のお子さんが近畿地方の他府県から受診されました。つまり7年間ずっとステロイドを塗布しているわけです。

全身とびひ状態で、MRSA(抗生剤耐性の黄色ブドウ球菌)と思って治療しましたが、やはりMRSAが検出されました。生後すぐというのは、まだ免疫機能が未発達で、その時からステロイドを塗布しているので、免疫抑制剤としてのステロイドにより免疫機能はかなり阻害されていると思いましたが、やはり皮膚の免疫機能が低下していて、MRSAがなかなか消えません。

それに加えてステロイド塗布を中止すると強いリバウンドを起こしました。その時はMRSAによるとびひ状態がよりひどくなり、全身から浸出液がしたたり落ちる状態でした。
内服の抗アレルギー薬等とイソジン消毒+抗菌剤外用+リント布カバーで治療しましたが、リバウンドが改善するのに半年かかりました。そして完全にリバウンドが治癒したのは1年後でした。

しかし、それ以降もとびひ状態は続いて、MRSAに効果のある抗生剤を内服すると改善しますが、内服が終わるとまたしばらくして、全身とびひ状態になります。その繰り返しで更に1年(初診時から2年)経過しました。

全体的には改善傾向にあるものの、まだまだMRSAによるとびひは続いていて、痒みも強く、夜間の不眠も続いていました。しかし、このお子さんのお母さんは、治療に全くぶれがありませんでした。いつも前向きで明るく、私の治療を信頼して継続してくれました。

この間、診察での説明はもちろん、色々なパンフレットを差し上げて、理解を深めてもらいましたが、それでも2年前と比べて著明に改善しているとは言えない状態ですので、私もより効果的な治療法はないかと考える日々でした。

食生活も和食中心で、スナック菓子も食べていないし、早寝早起きして、日常生活の過ごし方は問題はありません。そうするとやはりステロイドの生後すぐから7年間の塗布による免疫機能の低下が原因なので、それには色々な回復を早めるための補助的治療をしながら時間をかけるしかない、と考えました。

受診の度にその子のお母さんには、「アトピー性皮膚炎では腸の善玉菌が少なくそれが腸の免疫力を低下させているので、納豆で善玉菌を増やすのがいいです。」とか、「乾燥肌にはピュアセラミドのサプリメントが効果的です。」とか、色々アドバイスをしましたし、同時に精神的なサポートも繰り返し実施しました。

私の色々なアドバイスをお母さんは理解して実践してくれました。そして初診時から2年半後に、ようやくとびひ状態が軽減し、MRSAも陰性となりました。そして3年後にはほとんど治癒となり、3年半で皮膚も正常の状態となり、かゆみも全くなく治癒となりました。

最後の受診時にお母さんに「治癒です。本等によく頑張りましたね。お疲れ様でした。」と言うと、「実は、改善しない時には周囲から色々な事を言われました。『ステロイドを使ったほうがいい』、『病院を代わったほうがいい』とか、多くの方々に言われました。
でも私は先生の治療を信じていましたので、希望を持って頑張れました。ありがとうございました。」と答えられました。胸の中が熱くなりました。「お大事に、何かあればまた受診して下さい」と言うと、「もちろん、悪化したらすぐ来ます」とお母さんは答えられました。それ以後、そのお母さんとお子さんは受診しておりません。完治です。

 実例2.ステロイドを30年、プロトピックを5年、更に保湿剤もたっぷり塗布している成人の方が、関東地方の他府県から受診されました。ステロイドの種類も非常に強い物で、プロトピックも塗布しているので(プロトピックも中止によりリバウンドを起こします)、強いリバウンドを起こすと予想されました、それらを中止するとやはり非常に強いリバウンドを起こし、全身がじくじくとなり、足も腫れ下腿が大腿に近いほど太くなりました。
それらは予想された事なので内服+外用療法をして、仕事も休職して新幹線通院をされて治療を続けました。

強いリバウンドでしたが、1年後には改善し、足の腫れも改善し、全身のじくじくもなく、むしろ皮膚は乾燥で、朝起きると皮が布団いっぱいにちらばる日々でした。これは改善状態ですので、外用薬をなるべくうすく傷の所にだけ塗布するようにとアドバイスして、内服とスキンケアーを続けてもらいました。
しかし、なかなか顔面やその他の場所の傷をもったアトピー性皮膚炎の病変が改善しません。受診の度に「乾燥でかゆくつらいです」とか、「傷が痛いです」と言われます。そして非常に多くの外用剤を要求されます。私は薄く塗布するようにと毎回言いましたが、「範囲が広いし、外用剤が無くなるのが不安ですので」と言われ、処方を続けました。

そうやって当時は2−3ヵ月の処方が可能でしたので(残念ですが現在のクリニックでは最長で28日処方です)、その方とは年に数回会うだけで、受診の度に悪化はしていませんが、改善もしていないという状態が数年間続いていました。ご本人も仕事はできますし生活に支障はないので、受診を繰り返していましたが、私は治癒しない事に違和感を感じていました。

初診から5年くらいたった時、(この方は保湿剤依存症になっているに違いない)と思い、受診時に「このままでは治りません。思い切って外用剤を減らしてみませんか?」と言いました。
「減らすのは不安です。このままでいいです」とその方は反論されましたが、私は強く「治ると言う希望をもって、勇気を持ってください」と言い、もし「どうしても辛かったらまた外用剤を増やしてもいいですから」と追い詰めないように、避難口を用意しておきました。

そうして、イソジン消毒をメインにして、外用剤を非常に薄く塗布してもらうと、最初の1ヵ月は軽度のリバウンド(保湿剤でも中止にてリバウンドは起こります。私の外用薬は保湿剤ではないのですが、ご本人が保湿剤的に厚く塗布していました。)を起こしましたが、2−3ヵ月後には改善し、その後は皮膚の傷やアトピー性皮膚炎の病変もみるみるうちに改善してきました。

結局それから1年後には治癒となりました。約6年間かかりましたが、その方は現在再発も無く完治しています。
 治療は患者さんと医師の対話です。お互いに信頼し、協力し、ベストな治療を希望を持ってすることが、アトピー性皮膚炎の完治への道です。実例1のお母さんからは希望を持つことの大切さを教えられ、実例2の方には希望を強く持たせ、それが完治へと結びつきました。
 


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